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五轮书地水火风空 日文原版-第6章

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一 四手をはなすと云ふ事
四手をはなすとは敵もわれも同じ心に張合う心になると思はゞ、其侭心をすてゝ別の利にて勝つ事を云ふなり、大分の兵法にしても、四手の心にあれば捗ゆかず、人の先づる事なり、早く心をすてゝ敵の思はざる利にて勝つ事専らなり、又一分の兵法にても、四手になると思はゞ、其侭心をかへて敵の位を得て、各別変りたる利を以て、勝をわきまゆる事肝要なり、能々分別すべし

一 かげを動かすと云ふ事
陰をうごかすと云は、敵の心のみえわかぬ時の事なり、大分の兵法にしても、何とも敵の位の見わけざる時は、我かたより強くしかくる様に見せて、敵の手だてを見るものなり、手だてを見ては、各別の利にて勝つ事やすき所なり、又一分の兵法にしても敵後方に太刀を構へ、茫藰嫟丐郡毪浃Δ胜霑rふっと打んとすれば、敵思ふ心を必ず其の太刀に現はすものなり、現はれ知るゝに於ては、其のまゝ利を受けて慥かに勝つこと知るべきものなり、油断すれば拍子ぬくるものなり、能々吟味あるべし

一 影を抑ふると云ふ事
影を抑ふると云ふは、敵のかたより仕掛くる心のみえたる時の事なり、大分の兵法にしては、敵のわざをせんとする所を抑ふると云て、我方より其利を抑ふる所を、敵に強くみすれば、強きに抑えられて、敵の心かはる事なり、我も心をちがへて、空なる心より先を仕掛て勝つ所なり、一分の兵法にしても、敵の起るつよき気ざしを、利の拍子を以て止めさせ、止みたる拍子に、我勝利を受て先を仕掛くるものなり、能々工夫あるべし

一 移らかすと云ふ事
移らかすと云ふは物毎にあるものなり、或は眠りなどもうつり、或は欠伸などのうつるものなり、時のうつるもあり、大分の兵法にして、敵うはきにして事を急ぐ心の見ゆる時は、少しも其に介意はざるやうにして、如何にもゆるりとなりて見すれば、敵も我気にうつされて其気ざしたるむものなり、其移りたると思ふとき、我方より空の心にして、早く強くしかけて勝利を得るものなり、一分の兵法にしても我身も心もゆるりとして、敵のたるみの間を受て強く早く先にしかけ勝つ所専なり、又よわりと云て是に似たる事あり、一つは退屈の心、一つは浮つく心、一つは弱くなる心、能々工夫あるべし

一 むかつかすると云ふ事
むかつかすると云は物毎にあり一つにはきはどき心、二つには無理なる心、三つには思はざる心、よく吟味あるべし大分の兵法にしても、敵の心をむかつかする事肝要なり、敵の思はざる所へ仕掛けて、敵の心のきはまらざる内に、我利を以て先をしかけて勝つ事肝要なり、又一分の兵法にしても、初ゆるりと見せて、俄につよくかゝり、敵の心のはたらきに随ひ息をぬかさず、其侭利をうけて勝をわきまゆる事肝要なり、能くゝゝ吟味あるべし

一 おびやかすと云ふ事
おびゆると云ふこと物毎にあることなり思ひよらぬ事におびゆる心なり、大分の兵法にしても敵を刧やかす事眼前の事のみにあらず、或は物の声にてもおびやかし、或は小を大にしておびやかし、又片わきよりふっとおびやかすこと是れおびゆる所なり、其おびゆる拍子を得て、其利を以て勝べし、一分の兵法にしても身を以ておびやかし、太刀を以ておびやかし、声を以ておびやかし、敵の心になきことをふっと仕かけておびゆる所の利をうけて、そのまま勝を得ること肝要なり、能々吟味あるべし

一 まぶるゝと云ふ事
まぶるゝと云は敵我手近くなりて、互につよく張あひて、捗ゆかざると見れば、其侭敵と一つにまぶれあひて、まぶれあひたる其内に、利を以て勝つ事肝要なり、大分小分の兵法にも敵味方互に心はりあふて、勝負つかざるときはそのまゝ敵にまぶれて互にわけなくなるやうにして其うちの徳を得、そのうちの勝を知り、つよく勝つ事専らなり、よくゝゝ吟味有べし

一 かどにさはると云ふ事
角にさはると云ふは物毎につよき物を押すに其まゝ直には押込みがたきものなり、大分の兵法にしても、敵の人数を見て張り出強き処の角にあたりてその利を得べし、角のめるに随ひ、惣ても皆のめる心あり、其のめる内にも角々に心得て勝利を得る事肝要なり、一分の兵法にしても敵の体の角にいたみをつけて体少しにてもよわくなり崩るゝ体になりては勝つ事やすきものなり、此事よくゝゝ吟味すべし

一 うろめかすと云ふ事
うろめかすと云は、敵にたしかなる心を持せざるやうにする処なり、大分の兵法にしても、戦の場に於て敵の心を計り我兵法の智力を以て、敵の心を迷はせて兎の斯のと思はせ、晩し早しと思はせ、敵うろめく心に成る拍子を得て、慥に勝つ所をわきまゆるなり、又一分の兵法にして時に当りて、いろゝゝのわざをしかけ、或は打とみせ、或はつくとみせ、又は入り込むと思はせ、敵のうろめく気ざしを得て、自由に勝つ所是れ戦の専なり、能くゝゝ吟味あるべし

一 三つの声と云ふ事
三つの声とは初中後の声と云て、三つに掛けわくる声なり、所により声をかくると云ふ事専なり、声は勢ひなるによりて、火事などにも掛け、風波にもかくるものなり、声は又勢力を見する物なり、大分の兵法にしても、戦の初めにかくる声は如何程も嵩をかけて掛くべく、戦ふ間の声は眨婴蛞频驻瑜瓿訾肷摔皮fり、勝て後あとに大きに強くかくる声、是三つの声なり、又一分の兵法にしても敵を動かさむ為めの打とみせて、頭よりゑいと云声をかけ、声の後より太刀を打出すものなり、是を先後の声と云ふ、太刀と一度に大きに声をかくることなし、若し戦のうちに掛ることあれば、是は拍子にのる声にて、引てかくるなり、能々吟味あるべし

一 まぎるゝと云ふ事
まぎるゝと云は、大分の戦ひにしては人数を互に立て合戦のつよき時まぎるゝと云ふて、敵の一方へ掛り、敵くづるゝと見ば捨て又強き方にかゝる、大かたつゞらをりにかゝる心なり、一分の兵法にして敵大勢よするにも亦此心専なり、一方を追崩しては又一方つよき方にかゝり、敵の拍子を得て、能き拍子に左右とつゞたをりの心に思ひて、敵の色を見合て掛るものなり、其敵の位を得、打通るに於ては少しも引心なく強く勝つ利なり、一分の入身の時も、敵のつよきにはその心あり、まぎるゝと云ふ事、一足もひく事をしらず、まぎれ行と云ふ心、能々分別すべし

一 ひしぐと云ふ事
ひしぐと云ふは譬へば敵を弱く見なして、我強めになって挫ぐと云ふ事専らなり、大分の兵法にしても敵に人数の位を見こなされ、又は大勢なりとも敵うろめきて弱みつく所なれば、頭よりかさをかけて挫ぐ心なり、挫ぐ事弱ければもりかへす事有り、手の中に握って挫ぐ心能々分別すべし、又一分の兵法の時も、我手に足らざるもの、又は敵の拍子摺窑啤ⅳ工丹辘幛顺嗓霑r少しも息おくれず目を見合せざる様になし、真直に挫ぎつくる事肝要なり、能々吟味有べし

一 山海の変りと云ふ事
山海の心と云は、戦ふ中に同じ事を度々することあしき所なり、同じ事二度は是非に及ばず三度とするは甚だ悪し、敵にわざをしかくるに一度にて成らざる時は今一つもせきかけて、其の利に及ばずば今度は別に異りたる事をふっと仕掛け、尚それにても捗ゆかずば又別の事を仕かくべし、然るによって敵山と思はゞ海としかけ、海と思はば山としかくる心兵法の道なり、能々吟味あるべきことなり

一 底をぬくと云ふ事
底をぬくと云は敵と戦ふに其道の利を以て上は勝とみゆれども心をたへさゞるに依て、上にてはまけ下の心はまけぬ事あり、其儀に於ては我俄かにかはりたる心に成て敵の心をたやし、底よりまくる心に敵のなる処を見る事専なり、此そこを抜く事太刀にてもぬき、又身にてもぬき、心にてもぬく所有り、一道には弁ゆべからず、底より崩れたるは我心のこすに及ばず、左なきときは残す心なり、残す心あれば敵崩れがたき事なり、大分小分の兵法にしても底をぬく所、能くゝゝ鍛錬あるべし

一 新になると云ふ事
新になるとは敵と戦ふ時、縺るゝ心になって捗ゆかざる時、我気を振り捨て物毎を新らしく初むる心になり、其拍子を受て勝を弁ゆる所なり、新に成る事は何時も敵と我れきしむ心になると思はゝ其侭心を更へて各別の利を以て勝つべきなり、大分の兵法においても、新になると云所わきまゆる事肝要なり、兵法の智力にては忽ち見ゆる所なり、よくゝゝ吟味あるべし

一 鼠頭牛首と云ふ事
鼠頭牛首と云ふは敵と戦ふ中に、互に細かなる所を思ひ合て縺るゝ心になる時、兵法の道をつねに鼠頭牛首ゝゝゝゝと思ひて、如何にも細かなる中に、俄に大きなる心にして、大を小にかゆる事、兵法一つの心だてなり、平生の人の心も、鼠頭牛首と思
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