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一度、覚醒してしまったせいか、眠ることが出来ない。夏休み中、少しぐらい不摂生な生活を送っても罰は当たらないだろうと、起き上がって1階へ降りることにした。
階段を降りると、リビングにはまだ電気が付いていた。歩が消し忘れたのか、それとも、まだ歩が中に居るのかは階段の扉を開けなければ分からない。ドアノブに手をかけたところで、中から声が聞こえた。
歩が電話で誰かと喋っているのだろう。内容までは聞き取れないが、ここまで来て部屋に引き返すのも嫌なので、健人は階段の扉を開けた。ソファ俗盲皮い霘iが振り返り、目が合う。右手に持った携帯電話を耳にくっ付けている。こんな深夜に電話する相手がいるなんて、友達が多いと自負しているだけはあった。
電話している状態だったことに安堵し、健人は冷蔵庫へと向かう。冷やしてあるコ药‘を手に取り、棚からコップを取り出して並々と注いだ。
リビングからは楽しそうな歩の声が聞こえてくる。何を話しているかは分からないが、時折、笑い声が聞こえて健人は顔を上げた。リビングと向き合うように作られたキッチンからは、リビングの様子が伺える。健人に背を向けて話している歩がどんな表情をしているかは分からない。しかし、声からして楽しそうなので、笑っているのだろうなと思った。決して、健人には向けない笑みで。
健人は歩から目を逸らして、冷蔵庫にコ药‘を仕舞う。冷蔵庫のドアを椋Г幛郡韧瑫rに「じゃぁね」と、別れを告げる声が聞こえてどきりとした。タイミング的に、このままでは顔を合わす可能性が高い。それでも気にしていては仕方ないと思い、健人はすぐに振り向き、コ药‘を淹れたカップを手に取った。
視界にリビングが入る。先ほどまでいた歩は姿を消していて、顔を上げると歩は真横に居た。
「……邪魔なんだけど」
低い声が聞こえて、健人は眉間に力を入れた。歩は無表情で健人を見下ろしていて、キッチンのど真ん中に立っている。邪魔だと言われても、真ん中に立たれていては動くことも出来ない。
「お前も邪魔だよ」
はっきり言うと、歩が不服そうに横へずれた。その隙間から、健人は抜けるようにキッチンから脱出する。やはり、想像していた通り、両親が居なくなった瞬間、雰囲気は一気に悪くなった。いくら歩のことが嫌いだと言っても、言い争ったり揉めたりなんかはしたくない。出来るだけ関わらないように、健人は2階へと駆け上がった。
部屋の中に入ってから、貯め込んでいた空気を吐き出す。アイスコ药‘の入ったカップの水面が、少しだけ揺れていた。歩に対して、恐怖を覚えているのだろうか。それとも、別の感情なのかは分からない。ただ、今、一緒に居るだけでも物凄く辛いと思っていることは確かだった。
『はぁ俊·螭省ⅳい胜暄预铯欷郡盲茻o理に決まってんだろ。バァ
最初から一刀両断されることは承知していたけれど、ここまでバカにされるとは思わず、歩は携帯を握りしめた。両親が旅行へ出発した土曜日の昼過ぎ、目を覚ました歩は今日の寝床を探すべく、まずは親友であるジンの所へ電話をしてみた。ジンの家庭はかなり眩jで、いきなり言って泊まらせてもらえないことは分かっていたが、バカにされるとは思っていなかった。
「ですよね
『お前がいきなり泊まらせてなんて珍しいじゃん。どうかしたわけ?』
まだ友達になってから1年ぐらいしか経っていないと言うのに、ジンは歩のことを良く知っていた。歩は基本的に人のことを良く考えていて、他人がイヤだと言うことはあまりしない。そんな歩が無理を承知でジンに頼みこむなんて、珍しいことだった。
「いや、両親がさ……。今日から旅行行っちゃって」
『だったら家にいりゃいい袱悚蟆:韦扦猡贩蓬}って、あぁ、アレか。健人君と一緒に居たくないとか、そんなくだんね长趣坤怼
見事に考えを的中され、歩は言葉も出なかった。いきなり旅行へ行くと言われた時は、一体、何を言い出すのかと目の前にいる義母と父を真顔で見つめてしまった。つい、左手に持っていた茶碗を落としてしまうほど驚いた。健人がいるから家のことは大丈夫と言われた時は、全然大丈夫じゃねぇよと突っ込んでしまいたいぐらいだった。こんな険悪な状態で、二人一緒に過ごしたらどうなるかなんて想像すらつかない。両親がいたからセ殖隼搐皮い扛星椁狻ⅴ哗‘ブできなくなるだろう。
「くだんなくね琛
『まだ揉めてんの? 鬱陶しいなぁ……』
「仲直りするつもりもね韦恕⑷啶幛毪夂韦鉄oいだろ。俺さ、友達の家に泊まりに行くって言っちゃったんだよ。ど筏瑭‘……」
『考えなしに行動するからそう言う目に遭うんだよ。自分で考えろ』
どうやらジンは歩に助け船を出す気は無いようで、一方的に電話を切られた。甘えるつもりはないが、困っているときぐらい助けてくれても良いのではないかと思ったが、ジンが言ったことは正しかった。考えも無しに友達の家に泊まりに行くなどと言ってしまったから、歩はこうして行く宛てもなく困る破目になった。
それでも友達の多さは自信があり、歩は片っ端から友人に連絡を取って今日は泊まりに行けないかと交渉してみた。5、6人に電話をかけたところ、暇だから良いよと言ってくれた友達がいて歩はほっと胸をなでおろした。
歩に良いよと返事をしたのは中学生の時の友人で、高校に入ってからもそこそこ連絡を取り合っていた。中学の時は毎日のように撸Г螭扦い郡堡欷伞e々の高校に行ってしまったから高校に入ってからは夏休みや冬休みなど、大きい休みの時以外撸Г证长趣蠠oくなってしまった。そろそろ撸Г埭Δ瓤激à皮い郡韦恰⒍《攘激い妊预à卸《攘激盲俊
友人は歩が前に住んでいた家の近くに住んでいる。父が再婚したと同時に、林ノ宮高校に近い今の家に引っ越したので、ここからは電車を仱盲菩肖胜い趣い堡胜い挨椁みhい距離にあった。
歩は適当に荷物をまとめ、そっと家を出て行く。リビングに健人がいたら気まずいと思ったが、朝早くから起こされたせいでまだ寝ているのか、リビングに健人の姿は無かった。夏休みに入っても学校へ行くときと同じような生活を送っている健人にしては、こんな時間まで寝ているのはとても珍しい。その珍しさに救われた歩は、さっさと家を出た。
歩いて行ける距離に学校があるため、電車に仱毪韦暇盲筏证辘坤盲俊qk前にはショッピングモ毪浈钎雪‘トが立ち並んでいるので、電車に仱盲瞥訾堡毪胜嗓鉁缍啶摔筏胜ぁM陵兹栅韦护い㈦娷嚖沃肖仙伽忿zみ合っていて、歩はドアの近くで立っていた。流れて行く風景は、徐々に懐かしいものへと変わっていく。歩の母は、まだ健在だ。大して仲の良い夫婦と言うわけでもなく、父が離婚したいと言った時も母は顔色一つ変えずに、「分かりました」と返事をした。まだ1年半ほどしか経っていないせいか、その時の光景は良く覚えていた。
父は凄く真面目な人で、不倫などするような人ではなかった。職場で健人の母を好きになってしまったことをいきなり相談されたときは何事かと思ったが、歩に相談してくるほど思い悩んでいるのを見て、好きなようにしたら良いと言った。だから、歩は健人の母と付き合う前から父が好きだったことを知っている。それに歩の母も愛人を作っていたから、父が母以外の誰かを好きになることだって当たり前に受け入れてしまった。
二人が離婚することに一番反対したのは、5歳年上の兄だった。せめて歩が高校を卒業するまでは、と、兄は二人に説得していたが、離婚すると言ってしまった以上、両親の考えは変わらなかった。兄は歩にも同意を求めてきたが、母からは倦厭され、相手にもされていないことに嫌気が差していたから、離婚することを了承してしまった。その時、酷く傷ついたような顔をした兄の顔も、良く覚えていた。今まで忘れていようとした記憶が、地元が近づくに連れて蘇ってきてしまった。
数カ月ぶりに地元へ戻ると、目の前には懐かしい景色が広がっていた。駅前は商店街が連なっていて、帰りに食べ食いをしたりなどした。高校になってからもあまり変わっていないな、と歩は苦笑いした。
友人の家に行こうと、駅から出た時だった。
「……歩か?」
懐かしい声が背後から聞えて、歩は振り返った。歩の真後ろに居たのは、穏やかな笑みを浮かべている実の兄だった。
久しぶりに見た兄の顔に、歩は言葉が出せなかった。実の兄である進は歩の顔を見るなりに近寄ってきて、「元気そうだな」と歩の肩を叩いた。
「兄ちゃん、久しぶり」
そこでようやく目の前にいるのが進だと言うのを確信した歩は、笑顔を向けた。ケンカをしたことはあまりなく、仲の良い兄弟だった。両親が離婚してから、そんなに連絡を取ることは無かったが、歩は出来るだけ兄にメ毪胜赀B絡をよくしていた。し