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幽霊西へ行く(日语原文)-第6章

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「でも姉さん、あれは姉さんに、話していただいた通りの話なんですよ」
「わたしは晴夫さんに、松田の計画を知らせたなぞ、一言《ひとこと》も申したおぼえはありません」
「それだけは、僕《ぼく》の想像でした……」
 彼は面目なさそうに顔を伏《ふ》せた。
「わたくしも今日までは、晴夫さんが、松田を殺したものだとばかり思っていました。
 晴夫さん。松田が死にましてからの、あなたの結婚《けつこん》のお申しこみを、わたくしどうしても、お受けはいたしませんでしたね。あなたは定めし、わたくしに裏切られたとでも、お考えになっておられたことでしょう。
 しかしそうではなかったのです。わたくしは、あなたのためを思えばこそ、心を鬼《おに》にしてあなたのお言葉をお受けしませんでした。そして地獄《じごく》へ行くつもりで、勝原のところへ嫁《とつ》いで行ったのです。
 いま、信吉があなたに申しあげた、その言葉をそのまま勝原は、十年前あの事件のすぐ後で、わたしの耳にささやいたのです。ただ、あなたがどうして、松田の計画をご存じだったか、それだけは、どうしてもいいませんでしたが……
 ……どうです。私の口一つで、木下さんは死刑《しけい》になるか、よくいっても無期か、二十年ぐらいの懲役《ちようえき》ですね。あなたはそれでもかまいませんか。しかし何もね、私は好んで木下を、辛《つら》い目にあわしたいわけじゃないんですから、そこはまあ、俗にいう魚心あれば水心……これは私以外に真相を知っている者はないんだから、あなたが私と結婚してくれさえすれば、私はいつまでも、一言《ひとこと》も余計なことはしゃべりませんよ……。
 あの男は離《はな》れで、あなたが松田を殺して、死骸《しがい》を裸《はだか》にして撙映訾工韦颉ⅳ郡筏艘姢郡趣いΔ韦扦埂2门兴丐扦狻⒕欷丐扦狻ⅳ嗓长丐扦獬訾啤⒃^言するというのです。
 わたくしはもう、あなたのために、すべてをあきらめて、あの男と結婚《けつこん》する以外、ほかに方法はありませんでした。わたくしのため、恐《おそ》ろしい殺人罪まで犯して下さった、あなたのためなら、わたくしも、どんなことでも辛抱《しんぼう》しなければならないと思ったのです。
 それから十年、思えば長い苦しい年月でした。わたくしの体だけは、自由にしたというものの、心まで自分のものにならなかったことを知ったあの男は、持ち前の裸の性格をまる出しにして、日に夜にわたくしをさいなみました。その辛《つら》さ、その獣《けもの》のような物凄《ものすご》さは、何んといったらよいのでしょう。耐えられないと思っていた、松田の仕方さえ、あの十分の一にも、及《およ》ばなかったくらいです。
 そればかりではありません。兵隊から帰還《きかん》して来た信吉に、あの男は、このことを残らず話して聞かせたのです。わたくしたち、二人だけの秘密にしていたことを……
 ……お前の姉さんの、初恋《はつこい》の男っていうのは、実は恐ろしい人殺しなんだよ。今は偉《えら》くなってすましているが、もし俺《おれ》が一言でも口を割ったら、刑務所《けいむしよ》行きの代物《しろもの》さ……。
 こういわれて、信吉は血相変えて、わたくしの所へ飛んでまいりました。わたくしでさえ、今日までは、本当と思いこんでいたことなのです。信吉があなたを殺そうとつけねらいましたのも、青年の一筋に思いつめました血気から……どうか、お許し下さいませ。
 ところが今日でした。今日になって、はじめて事の真相が分かったのです。
 今日のお昼ごろ、わたくしの所へ使いが参りました。十年前、あの事件の当時、松田の所で看護婦をしておりました、塚越《つかごし》モト。ごぞんじでございましょうね。それが長い病気でもう二、三日しか持たないというので、わたくしにぜひ一目あいたいといって来たのです。
 ……わたくし奥様《おくさま》に、大変申しわけのないことをしておりました。今となっては、もう取りかえしもつきませんが、それを死ぬ前に申し上げておきませんと、わたくし死んでも死にきれません……。
 それが最初の言葉でした。そしてポツリポツリと、苦しい息の中で申したこと、それが恐《おそ》ろしい、この事件の真相だったのです。
 松田と尾形の、人殺しの計画を盗み聞きしたのは、この看護婦だったのです。そしてそのことを、寸分もらさず、教えた相手はあの男、勝原だったというのです!
 事件の計画を知っていたのは、晴夫さんでなく、勝原だったとしたならば、その計画を逆用したのがどっちだったか、これも疑う余地はありません。どちらが離《はな》れへ入ったのか、どちらが喧嘩《けんか》を売ったのか、事件の本筋とは、関係もないことだけに、眨伽猡膜い皮い蓼护螭扦筏俊¥蓼渴赆幛谓瘠趣胜盲皮险{べようにも、その方法がありません。
 ただ看護婦の話では、晴夫さんに喧嘩《けんか》を売ったのは勝原の方、そうして哕炇证未盲皮い胨刈筏い长螭恰⑦転手を殺させてしまうつもりだったといいました。何んという恐《おそ》ろしい計画だったことでしょう。鬼《おに》です。まるで悪魔《あくま》です。その上に自分も後からぬけ出して、そっと遠くから、哕炇证‘《しば》りつけられるまで見ておって、哕炇证k狂《はつきよう》したことを知り、これでいいと思って、金槌《かなづち》やタオルを捨てて、引き返したのだということでした。
 ああ、このことを十年前に知っていたなら、わたくしはそう思って、泣きながら、病人の顔を見つめました。しかし、この人もおそらくあの男を愛していたのに摺钉沥筏いⅳ辘蓼护蟆¥铯郡筏稀ⅳ长稳摔蚓獭钉趣筏幛霘荬摔悉胜辘蓼护螭扦筏俊¥工伽皮蛟Sすと約束《やくそく》して、安らかに死なしてやりたいと思いました。
 フラフラと、腑抜《ふぬ》けのようになって、家へ帰って来たわたくしの気がついたのは、あの男がいつも大事にして、わたくしに開けさせたこともない、箪笥《たんす》のことでした。わたくしは泥坊《どろぼう》のように、それを一生|懸命《けんめい》にこじ開けました。そしてわたくしは、その中に見たのです。松田があの夜、殺された夜に、着ていたはずのジャンパ去亥堀蟆ⅳ郡筏摔饯欷诉‘いはありませんでした」
 何んと恐ろしい、私にとっては、何んと心を鋭《するど》くえぐって来る事件の真相であったろうか。傍《かたわ》らに立つ信吉もいまは私への恩讐《おんしゆう》を忘れて、ただハラハラと涙《なみだ》をこぼしているのだった。
「姉さん、すみませんでした」
「いいのよ、いいのよ。もう何もかも終わったのよ。いま一度、と思ってやって来た思い出の場所で、こうしてあなた方にあえたのも、晴夫さんの命を助けることができたのも、みんな、神様のおかげでしょう。一生幸福を知らなかった、わたくしのような、みじめな女でも、神様は一度は助けて下さったのね……」
 聞こえるか、聞こえないかの言葉であった。私と信吉とは、その時顔を見合わせていた。
「さあ、信吉君、これで君の気持ちも晴れたろう。あらぬ疑いをかけられた時は、さすがに僕《ぼく》もギクリとしたが、もう君と僕との間には、何んのわだかまりも残ってはいない。すべてを忘れて、姉さんを助けてあげようじゃないかね」
 彼も大きくうなずいた。
「そうしましょう。僕のしたことを許していただけるなら、これほど嬉《うれ》しいことはありません。姉さん、塚越さんはまだ生きているのでしょう。その言葉を証拠《しようこ》にして、あの男を警察へつき出そうじゃありませんか」
 澄江は静かに首を振《ふ》った。
「だめです。もうあの男には、法律は何んの役にも立ちません」
「いや、時効には、まだまだ間があるはずですよ。澄江さん、十年前と私の気持ちはいまも変わっていません。いま一度、僕の言葉を真剣に考えては下さいませんか」
 澄江は、ぱ蠓紊悉摔蓼趣盲俊Ⅻいマントを翻《ひるがえ》して、断崖《だんがい》の上に立ち上がった。その顔はすべてを諦《あきら》めきったというような、何か神々《こうごう》しい色であった。
「晴夫さん。あなたのお気持ちは、わたくしあの世まで、嬉《うれ》しくいただいて参ります。でもわたくしは、あなたとこの世で結婚《けつこん》するわけには行かないのですわ。すべてはもう終わってしまいました。わたくしは、二人の夫を殺した女……あの男は、わたくしの飲ませた毒で死んでいます。最後にあなたにお目にかかれて、本当に嬉《うれ》しかった……では、信吉さん、晴夫さん、さようなら……」
 はっと引きとめようとして、私たちの差し出した手も間に合わなかった。
 血の出るような、絶叫《ぜつきよう》を後に残して、澄江の体は、皎々《こうこう》と輝《かがや》く月光に照らされながら、無限の空間へ堕《お》ちて行っ
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