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幽霊西へ行く(日语原文)-第20章

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「先日の話はお気にいりましたか?
 実は、私も推理小説には大変興味を持っているために、あなたの作品にヒントを得て、いかにも、もっともらしい幽霊《ゆうれい》の犯罪を考え出して見たのです。
 たしかに、金融《きんゆう》犯罪を担当している検事の考えつきそうな物語でしょう?
 あの話をしていたときの、あなたのお顔と声から判断して、物語としては、たしかに成功したなと思ったのですが、さて、解決はと聞かれたときには、私もはたと当惑《とうわく》いたしました。実は、この解決はまだ考えていませんでした――というよりは、どんなに睿颏窑亭盲埔姢皮狻F在のわれわれの捜査《そうさ》技術では、この犯人たちは捕《つかま》えきれないだろうというのが、正直な告白なのです。
 ですから、この話も推理小説としては落第でしょうし、私も推理小説を書こうという野望はなくしてしまいましたが、ひとつ、あなたの力で、この事件の解決をつけて見てはいただけませんか?」
 これは、ある意味では、推理作家に対する法律家の挑戦《ちようせん》のようなものだった。私は、それから数日、必死に頭をしぼったが、とうとう万人を迹盲丹护毪瑜Δ式鉀Qは発見することが出来なかった。それでやむを得ず、一つの詐欺《さぎ》犯罪の物語として、ここに紹介《しようかい》したわけだが、さて諸君なら、この犯人たちをどうして捕えさせるでしょうか?



 五つの連作――犯人当て小説――

  殺人パララックス――犯人当て小説 その一――

    1

 ちょうどその日は日曜日だった……。
 しかし、犯罪者というものには、曜日の観念などはぜんぜんない。したがって、それを追う警察官にしたところで、まるでむかしの海軍のように、月月火水木金金という一週を送り迎《むか》えしなければならないことが多いのだ。
「たまの非番の日曜ぐらい、休ませてもらいたかったなあ」
 捜査《そうさ》一課の加瀬敬介警部は青山《あおやま》の殺人現場へむかう自動車の中で、殺しの鬼といわれる彼には珍《めずら》しい愚痴《ぐち》をこぼした。
 そばから、横山部長刑事が同情するように、
「全くですなあ。こういう商売では、家庭の平和も、子供の教育もありませんでねえ。今日もひさしぶりに子供たちをどこかへつれて行こうと思っていたんですが、親の心ホシ知らずです」
「僕《ぼく》も中学一年の坊主《ぼうず》と、動物園へ行くつもりだったんだがね。やっこさん、近ごろカメラにこって、従兄弟《いとこ》のお古をまきあげて、将来はカメラマンになるんだと大はりきりさ。その手はじめが動物科らしい」
「そうですか? それでもカメラは、ちょっと金がかかりますが、趣味と実益がかねそろうからいいじゃありませんか。それにしてもカメラの最近の進歩はこわいですねえ。われわれの子供のころには、せいぜい金一円なりの枺_カメラぐらいしか持てませんでしたな」
 もちろん、二人とも、これから捜査《そうさ》を開始しなければならない殺人事件のことは忘れてしまったわけではない。ただ、死体も現場も見ない前に、よけいな先入観をいだくのは禁物《きんもつ》なのだ。こういう無意味な雑談で、しばらく時をすごしたとしても、べつに怠慢《たいまん》だといわれることもないだろう。
 しかし、窓から警官の姿を見つけて、横山部長もわれにかえったようだった。
「さあ、現場です。たしかにあの五人のうち一人は嘘《うそ》をついていますね」
「うむ……」
 車がとまった瞬間《しゆんかん》には、警部も鬼《おに》になっていた。肩《かた》をゆすって車をおりたときには、もう子供のことも、カメラのことも、念頭から消えてしまっていた。

    2

 殺人現場は、青山|高樹町《たかぎちよう》にある米沢家の庭だった。
 高いコンクリ趣螇B《へい》にかこまれた庭の広い堂々たる邸宅《ていたく》だが、その門の近くの植え込みの中に、一人の男が倒《たお》れていたのを、今朝お手伝いが発見し、あわてて警察へ知らせたのだ。
 凶器《きようき》はどこでも売っているような鋭《するど》い飛び出しナイフ、それで背中から心臓のあたりを一撃《いちげき》し、倒れたところを植え込みの中へひきずりこんだものと推定される。死亡推定時刻は昨夜の十一時前後――これは、鑑識《かんしき》課員の科学的意見も、捜査官《そうさかん》たちの経験的意見もぴったり一致《いつち》したことだし、後で解剖《かいぼう》した所見でも同じ結論に達したのだった。
 門柱の上の門燈《もんとう》もめちゃめちゃにこわれている。犯人が――と、警部は一瞬《いつしゆん》思ったが、先に現場へ来ていた青山署の刑事《けいじ》の話では、昨日《きのう》の夕方、この前で子供が野球の練習をしていてあやまってこわしたということだった。これで警部の疑惑《ぎわく》は晴れたが、それにしても、この暗さは犯人には味方したはずなのだ。きっと、この男がやって来ることを知っていて、植え込みの中にかくれ、やりすごして背後からおそいかかったのだろう。傷の様子から判断してほとんど即死《そくし》――声をたてるいとまもなかったろうと思われる。
 死体は一メ去肓互螗沥挨椁ぁ⒅腥庵斜长翁澶坤盲俊%哎飑‘のワイシャツに伪硯凇ⅴ惟‘ネクタイ、年のころは二十七、八だろうが、警部の死顔からうけた印象では前科の一つ二つはありそうだった。
 財布《さいふ》の中には、千円ぐらいの金が入っているが、名刺《めいし》や定期や証明書など、身元を知る手がかりになるものは、一つも発見されなかったということだった。
 これだけのことをたしかめると、加瀬警部は、煙草《たばこ》に火をつけ、背筋をのばしていい出した。
「とにかく家族の者にあって見よう」

    3

 米沢家の人々は、お手伝いさんの江藤ハル子を加えて五人だった。
 米沢哲雄、裕子の兄弟、その叔父《おじ》にあたる米沢泰二、哲雄の母方の従兄《いとこ》の吉崎信也。
 警部はまず米沢泰二から尋問《じんもん》をはじめた。五十がらみのでっぷり肥《ふと》った男で、人あたりもやわらかく、聞きもしないことまでよくしゃべるような性格は、このさい有難いものだった。
 米沢哲雄たちの父――泰二の兄は、ある食品会社を経営していた。ところが四年ほど前、脳溢血《のういつけつ》の発作で倒《たお》れ、当時大学三年だった哲雄と、女子大一年の裕子を残して世を去ってしまったのである。母親は何年も前に死んでいたし、二人ともまだ一人前とはいえないから、親族会議の結果、哲雄が一本だちになるまで、泰二がこの事業の経営をひきうけ、また親がわりの面倒《めんどう》を見ることになったというのである。
「何しろ私も妻子に死にわかれて、一人ぽっちの身の上ですから……まあ、不幸なもの同士、あの二人は自分の子供と思っていますよ」
 葉巻をくゆらせながら、泰二はつぶやいたが、肝心《かんじん》の死体については、なんの心あたりもなさそうだった。
「昨夜、私は十一時ごろまで部屋《へや》で書類を眨伽皮い蓼筏郡ⅳ胜摔鈿荬膜蓼护螭扦筏郡汀5谝弧ⅳⅳⅳいτ捱B隊《ぐれんたい》みたいな男とは、ぜんぜん近づきがありませんよ。哲雄や裕子の知り合いとも思えませんしねえ……」
 この言葉には嘘《うそ》はなさそうだった。警部も一応これ以上の追求をあきらめて、次の証人眨伽摔盲俊
 米沢哲雄は、大学を出て、一応他人の飯を食って来ようと、ほかの商事会社に就職したというのだが、たしかにちょっと見たところでは、すぐに社長がつとまりそうな感じではなかった。中肉中背のあまり見ばえのしない青年で、け硯冥衰庭骏い颏沥螭冉Yんでいるところはなかなかの堅物《かたぶつ》らしい。
「昨夜は大学当時のクラスの会がありましてね。十時半ごろ、今から帰ると家へ電話したのですが、また喫茶店《きつさてん》へよりたくなって、実際に家へ着いたのは十一時半ごろだったでしょうか。死体にはぜんぜん気がつきませんでした。暗かったので見おとしたのでしょう。私はあまり飲めない方なのですが、昨夜はむりに飲まされて、大分|酔《よ》っていましたし……」
 第三の証人、米沢裕子は勝気そうな娘だった。かわいい睿А钉郅筏颏砖‘っとふくらまして、
「あたしがあんな妙《みよう》な男とつきあいがあるとお考えになりますの? 昨夜はずっと本を読んでいましたし、べつに気になるようなこともありませんでしたけれど……どうしてあの男はうちの庭なんかで死んだんでしょう。おかげでこっちも大迷惑《おおめいわく》だわ」
 となげやりに近い返答だった。
 第四の証人、江藤ハル子はまだ十七の小娘だった。青森の田舎《いなか》の中学を卒業して、すぐに上京して来たらしいのだが、いかにもぽっと出という感じで口もろくにきけない。
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