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白夜行:日文版-第105章

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「篠塚さんのお名前は、高宮さんから伺ったんです。それで、お仕事中申し訳ないと思いましたが、お電話させていただきました」男はやや粘着伲士谡{でいった。
「どういった御用件でしょうか」一成は訊いた。声が少し固くなった。
「ある事件の捜査のことで、ちょっとお話を伺いたいんです。三十分でいいですから、お時間、いただけませんか」
「ある事件というのは?」
「それはお会いしてからお話しするということで」
 低い笑い声のようなものがかすかに聞こえた。大阪の、いかにも狡猾《こうかつ》そうな中年男のイメ袱⒁怀嗓晤^の中で膨らんだ。
 どういう事件に関係していることか、気になった。大阪から刑事が来るからには、些細なことではないのだろう。
 そんな彼の内心を見透かしたように男はいった。
「じっは今枝さんに関することでもあるんですわ。今枝直巳さん、御存じでしょう?」
 一成は受話器を握る手に力を込めた。緊張感が足元から這いあがってきた。同時に不安な思いが胸に広がる。
 なぜこの男が今枝のことを知っているのか。いや、今枝と自分の関係を知っているのだろうか。ああした職業に携わっている人間が、仮に警察官に尋ねられたとしても、容易に依頼人の名前を明かすとは思えなかった。
 一つだけ考えられることがある。
「今枝さんに何かあったのですか」
「さあ、そこです」と男はいった。「それも含めてお話があるんです。是非お目にかからせていただけませんか」男の声は、先程よりも幾分凄みを増したようだった。
「今、どちらにいらっしゃいますか」
「おたくの会社のすぐそばです。白い建物が見えます。七階建て、みたいですな」
「受付で、企画管理室の篠塚一成に会いたいとおっしゃってください。それでわかるようにしておきます」
「企画管理室……ですか。わかりました。すぐに伺います」
「お待ちしています」
 いったん電話を切った後、一成は再び受話器を上げた。今度は内線だ。正面玄関の受付に電話し、ササガキという人物が来たら、七番来客室に通すよう命じた。そこは取締役たちが主に私的な用件で使うための部屋だった。
 七番来客室で一成を待っていたのは、年齢のわりに体格のいい男だった。髪は短く刈り込まれていたが、それでも白いものが混じっていることが遠目にもわかった。一成がドアを開ける前にノックしたからか、男は立ち上がっていた。まだ蒸し暑い日が続いているにもかかわらず、茶色の背広を着て、ネクタイも締めていた。関西弁で話す口眨椤⒁怀嗓蠂怼─筏療o神経な人物を漠然とイメ袱筏皮い郡韦坤⑸伽酚喺工氡匾ⅳ毪猡筏欷胜い人激盲俊
「お忙しいところ、すみません」男は名刺を出してきた。
 一成も自分の名刺を出し、男と交換した。だが手にした名刺を見て、少し戸惑った。そこには警察署名もなければ、所属も肩書きも記されていなかった。ただ笹垣潤三とあり、住所と電話番号が印刷されているだけだ。住所は大阪府八尾市となっていた。
「余程のことがないかぎり、警察の名前が入った名刺は使わん主義なんです」笹垣は笑いで顔の皺を一層深くしていった。「昔、そういう名刺を人に渡したところ、悪用されたことがありましてね。それ以来、個人的な名刺を使うようにしてます」
 一成は黙って頷いた。隙《すき》を見せることを許されない世界に生きているということなのだろう。
 笹垣は背広の内ポケットに手を入れ、手帳を出してきた。写真の貼ってある身分証明書のペ袱蜷_き、一成のほうに見せた。「御確認ください」
 一成は一瞥《いちべつ》してから、「どうぞおかけになってください」といってソファのほうを掌で示した。
 どうも、といって刑事は腰を下ろした。膝を折る一瞬、彼は顔を少ししかめた。初老に入っていることを示した瞬間だった。
 二人が向き合って座った直後、ドアをノックする音がした。入ってきたのは女子社員だった。トレイに湯飲み茶碗を二つ載せている。それをテ芝毪酥盲⒁焕瘠筏皮槌訾皮い盲俊
「立派な会社ですな」笹垣はそういいながら湯飲み茶碗に手を伸ばした。「立派な会社は、応接室も立派ですな」
「おそれいります」一成はいった。だがじつのところ、この来客室はさほど立派でもないと思っていた。取締役専用とはいえ、ソファやテ芝毪胜嗓纤卫纯褪窑韧袱猡韦扦ⅳ搿¥长长蛉【喴蹖熡盲摔筏皮ⅳ毪韦稀⒎酪艄な陇蚴─筏皮ⅳ毪椁坤盲俊
 それで、といって一成は刑事の顔を見た。
「お話というのはどういったことでしょうか」
 ふむ、と頷いて、笹垣は湯飲み茶碗をテ芝毪酥盲い俊
「篠塚さん、あなた、今枝さんに仕事を依頼されましたね」
 一成は軽く奥歯を噛んだ。なぜこの男が知っているのか。
「警戒されるのも無理ないと思います。けど、正直に答えていただきたいんです。私は今枝さんからあなたのことを聞いたわけやないです。じつは今枝さん、行方不明なんです」
「えっ」思わず一成は声を漏らした。「本当ですか」
「本当です」
「いつから?」
「さあ、それが……」笹垣は白髪混じりの頭を掻いた。「それがはっきりせんのです。ただ、先月の二十日に高宮さんのところに、今日か明日会いたいという内容の電話があったそうです。高宮さんは、明日ならいいとお答えになりました。それで今枝さんは、明日もう一度電話するとおっしゃったらしいです。ところが結局次の日、高宮さんのところに電話はかかってこなかったという話です」
「ということは、二十日か二十一日以後、行方がわからないと……」
「今のところ、そういうことです」
「そんな……」一成は腕組みをした。知らぬ間に唸り声を漏らしていた。「どうして彼が行方不明なんかに……」
「じつは私、それより少し前にあの人と会っているんです」笹垣はいった。「ある事件の捜査で訊きたいことがあったんです。その後、もう一度連絡を取ろうとしていたんですけど、何回電話しても誰も出えへん。それでおかしいと思いましてね、昨日上京して、今枝さんの事務所を訪ねてみたんですわ」
「誰もいなかったわけですか」
 一成の問いに、笹垣は顎を引いた。
「啵П闶埭堡蛞枻い皮撙郡椤⑧'便物が結構溜まってました。それでおかしいと思って、管理人に頼んで部屋を開けてもろうたわけです」
「部屋の中はどうなってました?」一成は身を仱瓿訾筏俊
「どうもなってませんでした。何か事故らしきことが起きた形跡もありません。一応地元の警察に知らせておきましたけど、今のままでは積極的に今枝さんを捜すということはないかもしれませんな」
「彼は自分の意思で姿をくらましたということですか」
「そうかもしれません。けど」笹垣は自分の顎をこすった。「そのセンは薄い、と私は見てます」
「といいますと」
「今枝さんの身に何かが起きた、と考えたほうが妥当やないかと思うわけです」
 一成は唾を飲み込もうとした。だが口の中はからからに渇いていた。彼は湯飲み茶碗を取り、茶を啜《すす》った。
「何か危険な仕事でもしていたんでしょうか」
「問睿悉饯长扦工省构G垣は再び内ポケットに手を入れた。「ええと、煙草を吸うてもかまいませんか」
「ああ、どうぞ」彼はテ芝毪味摔思膜护椁欷皮い骏攻匹螗欹寡uの灰皿を笹垣の前に置いた。
 笹垣が取り出したのはハイライトだった。今時珍しい、と白地に青のパッケ袱蛞姢胜橐怀嗓纤激盲俊
 刑事は煙草を指にはさみ、濃い乳白色の煙を吐き出した。
「私が前回今枝さんに会《お》うた時の感触では、このところの主な仕事は、ある女性に関する眨麞摔浃盲郡人激Δ铯堡扦埂¥饯闻预趣いΔ韦lか、篠塚さん、もちろんあなたも御存じですね」
 たった今まで人の良ささえ幔烦訾筏皮い抗G垣の目が、突然|爬虫類《はちゅうるい》を思わせる鈍い光を放った。その視線はねっとりと一成の身体にからみついてくるようだった。
 ここでとぼけても無意味だと一成は感じた。そしてこう感じさせるところが、いわゆる刑事の持つ迫力というものなのだろうと解釈した。
 彼はゆっくりと頷いた。「ええ、知っています」
 結構、というように頷き、笹垣はステンレスの灰皿の中にハイライトの灰を落とした。「唐沢雪罚Г丹蟆碎vする眨麞摔蛞李mされたのはあなたですね」
 それには敢えて答えず、一成は少し自分のほうからも伲鼏枻筏皮撙毪长趣摔筏俊
「私の名前は高宮からお聞きになったとおっしゃいましたね。そのあたりの繋がりが、どうもよく把握できないのですが」
「なあに、そう難しいことやないです。あまり気にされる必要はありません」
「でもそれがはっきりしないことには」
「伲鼏枻舜黏à摔ぃ俊
 ええ、と一成は頷いた。数々の修羅場を経験してきたに摺い胜ば淌陇蝽撙膜堡皮夂韦蝿抗猡胜い坤恧Δⅳ护幛普妞弥堡挨四郡蛞姢膜幛俊
 笹垣
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